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【新春特別インタビュー】三浦瑠麗氏が読み解く!日米中韓の近未来 「トランプ氏は再選する」「日本は韓国を突き放すな…中国の分断工作に注意を」米中貿易戦争
2020.1.2
■三浦瑠麗(みうら・るり) 国際政治学者。1980年10月3日、神奈川県出身。39歳。東京大学農学部卒業。東大公共政策大学院専門修士課程、法学政治学研究科総合法政専攻博士課程修了。東大政策ビジョン研究センター講師などを経て、山猫総合研究所代表。『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『日本に絶望している人のための政治入門』(文芸春秋)、『21世紀の戦争と平和』(新潮社)、自身の半生を振り返ったエッセー『孤独の意味も、女であることの味わいも』(新潮社)など著書多数。
香港問題を抱える中国、赤化路線の韓国、相変わらず牙をむき出しにする北朝鮮。
東アジアが混沌とするなか、2020年、米国で大統領選が行われる。
敵多きドナルド・トランプ氏は再選できるのか。
それ次第で再び世界が大きく動きかねない。
不確実性を増す国際情勢を大胆に読み解くのがこの人、国際政治学者の三浦瑠麗氏だ。
新春恒例、独占インタビュー。(聞き手・鈴木恭平)
■トランプは再選する ブーティジェッジさん台頭に期待
2020年、ドナルド・トランプ大統領が再選される可能性は高いですね。
トランプ大統領はウクライナの大統領に対し、ライバルであるジョー・バイデン前副大統領の息子をめぐる不正の有無を捜査しないと巨額の軍事支援を行わない、と圧力をかけた疑惑を持たれています。
民主党はこの事件を理由として弾劾手続きを進めていますが、トランプさんのイメージが悪くなっても、肝心の民主党の候補者にトランプさんに勝てそうな人が浮上してこないんですね。
大統領選の結果を左右するのは、白人労働者の動向と黒人の投票率です。
前回、トランプさんと争ったヒラリー・クリントン元国務長官が敗れたのは、「白人労働者の票を失ったからだ」と言われています。
それに加えて、白人よりも投票率が低い黒人がどれだけ投票にいくかというのも重要なポイントです。前回の大統領選では、黒人運動のBLM(警官による黒人射殺などに抗議する人種差別撤廃運動)の指導者が「ヒラリーに投票するな」という声明を出しました。
投票した黒人のほとんどは民主党を支持しましたが、やはり投票率は上がらず、オバマ前大統領のときのようには支持を集められなかった。
民主党は、自分たちが黒人有権者に関して甘い見通しに立ったことにきちんと向き合えていません。
民主党の候補者の中では、先に触れたバイデンさんは労働者や黒人の組織票こそ手に入れていますが、投票率を上げることはできないでしょう。
ウクライナ疑惑もあり、復活できないはずです。
また、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長も出馬を表明しましたが、トランプさんと同じ大富豪の白人高齢者に、民主党支持者はついてこないでしょう。
穏健派のバイデンさんとインディアナ州サウスベンドのピート・ブーティジェッジ市長から票を食うだけです。
穏健派が三つどもえの争いをすると、エリザベス・ウォーレン上院議員が候補になる可能性が高くなります。
彼女は反ウォール街の急進左派で、バーニー・サンダース上院議員同様、富裕層の資産に課税する案など「極端な左寄りの政策」で経済界から猛反発を食らっています。
ウォーレンさんは若者の支持を得るかもしれない。
しかし、いざ民主党の候補になったとき、急進派過ぎてトランプさんに勝てるとは思えません。
万が一、勝ったとすれば、トランプさんと同じかそれを上回る問題を引き起こすでしょう。
重要なのは、ウォーレンさんの掲げている公約の実現には巨大な財源が必要だということ。
中産階級への課税を避け、軍事費を削るのではないかと思われます。
これは日本にも影響します。
抑止が手薄になる可能性が高まるからです。
日本にとっては、ウォーレンさんよりトランプさん再選のほうがマシとすら言えるかもしれません。
かといって、トランプさんに今後何か期待できるわけではありません。
2024年、民主党穏健派のブーティジェッジさんが出てくることに期待しています。
彼は、下手な経済政策や外交政策はしないはず。
経済成長を志向し、再び米国に活力をもたらすのではないでしょうか。
37歳という若さも魅力。
同性愛者であることを明らかにしています。
まだ世界的には無名ですが、現在、大統領選の序盤戦となるアイオワ、そして直近のニューハンプシャーの世論調査で民主党候補の1位に躍り出ており、2020年は名前を知られるでしょう。
■韓国を突き放すな 日本は原理原則を貫いて
続いて、韓国とどうつき合えばいいのかという問題です。
韓国は日本に関していろいろなことを言いますが、その多くは韓国の内政問題なので、それに1つ1つ、反応する必要はありません。
また、日本による朝鮮半島統治時代の請求権問題は、1965年の日韓基本条約と同時に締結された日韓請求権協定で解決されたという「国際的な約束」の原理原則を貫くべきでしょう。
ただ、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効が寸前で回避されましたが、韓国が離脱停止をした以上は、プロの外交官同士で話し合うことは大事です。
歴史問題と切り離せる問題については、基本、協力する立場をとる必要があります。
では、どうしたら韓国との間で「私たちの意思を通しながら、譲らずに」友好関係を作ることができるのか。
韓国を貿易管理上の優遇措置を受けられる「ホワイト国」(現グループA)に入れていたのは、将来にわたる貿易管理努力を期待したという側面もあります。
軍事転用可能な物資が北朝鮮に渡らないようにすることは日韓共通の利益のはずです。
除外して「もう知らない」ではなく、ホワイト国に戻れるような取り組みをこちらから提案してはどうでしょう。
取り合わない姿勢を貫くのではなく、日本が積極的に「韓国を中国、北朝鮮ではなく西側に向かせる努力をする」ことが大事なんだと思います。
韓国との関係が悪くなって一番喜ぶのは中国だからです。
■中国の分断工作に踊らされるな
中国が望んでいるのは、日韓や日米が仲間割れをすること。
中国系メディアの日本語媒体のネット記事には、日本人の韓国不信、米国不信をあおる記事が並んでいます。
ロシアがSNSのフェイクアカウントを数多く作り、米国の大統領選に介入していましたよね。
日本でも同じことが起きるリスクは常に頭に置いておかなければいけません。
ロシアはなぜ米国の社会分断を広げようとしたのでしょうか。
一見、米国の白人と黒人やメキシコ系移民が争っても、ロシアに直接的な利益はないと思われます。
しかし、国内に対立構造を作ることによって国民は内向きになり、その分、対外的な力は失われます。ロシアは米国の国力を弱めることを狙っているのです。
中国も、日米や日韓を分断させにくるでしょう。そのときは米国の人種問題と同様、「実在する分断」が利用されるだろうと思います。
沖縄の米軍基地を巡る分断、「もはや米国の抑止はきかない」という不信感。
まずは国内の分断を癒やし、冷静に議論する風土を作っておくことです。
中国に協力するつもりがなくても、SNSのあおりに乗り、やみくもに国内の分断を広げれば、結果的に中国を利してしまうのです。
2020年、私たちはこういった世論介入をもっと意識した方がいいと思います。
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