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「西部邁 & 伊藤貫」の思想(YouTube)のブログ
リアリスト学派の国際政治学による日本の外交・国防、国際情勢の分析
2021-03-04
ユダヤ陰謀論(国際金融資本陰謀論)の矛盾②(世界を支配する存在とされているのに、学術的に研究されない)
ユダヤ陰謀論は、「何が国際社会を動かしているのか」を理解するための理論(=考え方の枠組み)であるが、それと同様に国際社会の動きのメカニズムを理解するための理論であるリアリスト学派の国際政治学とを比較してみたい。対照的なこの2つを比較することで、ユダヤ陰謀論が持つ矛盾がより明らかになるだろうと考えられるからである。
まず、国際政治学(リアリスト学派)について、簡単に説明する。
※「ユダヤ陰謀論(国際金融資本陰謀論)の矛盾①」と「①の補足」の記事は無料でご覧いただけます。
詳しくは一番下を参照
国際政治学は、アカデミズム(学問)の分野において、国際社会が動くメカニズムを研究対象にしている学問であり、その主流派はリアリスト学派である。その起源は、今から3000年前の中国の戦国時代における「合従連衡」外交や、今から2500年前のギリシャの戦史家トゥキディデスが記した「戦史(ペロポネソス戦争の歴史)」まで遡ることができる。
リアリスト学派が体系化した国際社会のおける基本的な原理は、国際社会は各国が国益を最大化するために動いている無政府状態であり、国際社会の動きは、国家と国家との国益を巡るぶつかり合いによって決められるというものである。そして、無政府状態であるがゆえに、その国家間の争いの勝敗を左右するのはバランスオブパワー(主として軍事力に基づく勢力均衡)であるとされている。つまり、力の弱い国は強い国に支配され、淘汰もされるという弱肉強食の原理で動いているということである。リアリスト学派のこの論理によって、過去3000年の国際社会の様々な動きを説明することが可能であり、その信憑性も高いと評価されている。
それゆえに、多くの国(中国、米国、英国、フランス、インド、ロシア、イスラエルetc)でリスリスト学派の考え方に従って、外交・国防政策が決定されている。例えば、米国の外交政策決定の中枢にいた、ジョージケナン、キッシンジャー、ブレジンスキーなどは、皆、リアリスト学派の学者である。また、米国の大学の国際政治学の授業で主として使われているテキストも、リアリスト学派のものである。
ちなみに、日本においてはこのような世界の流れとは逆に、リアリスト学派ではなく、主流派ではない、(軍事力ではなく国家間の話し合いや国連や国際法などに基づいて国際社会は動いていると考える)理想主義学派の学者が日本の外交方針やアカデミズムにおいて、主流となっている。彼らは、経済相互依存論や覇権安定化理論やデモクラティックピースセオリーなどを主張しているが、実際の国際社会では、それらの理論とは異なる動きが起きるため、理論的に問題があるとされている。特に、それまで覇権を握っていた国が衰退し、国際秩序が不安定になると理想主義の原理が通用しなくなることがしばしば起きる。
したがって、理想主義学派は、リアリスト学派のように主流派になることができないでいるし、すでに述べたように日本などの例外を除き、他国は現実主義に基づいて外交・国防政策を決定している。理想主義が通用しない出来事として、近年では、国連の決議を無視して行われた2003年のアメリカによるイラクへの軍事進攻や、ロシアによるウクライナのクリミア併合、中国によるチベット・ウイグル・内モンゴル・満州国の併合、台湾や尖閣諸島に対する軍事的挑発行為、南沙諸島での軍事基地建設、イスラエルによるパレスチナに対する軍事侵攻などが挙げられる。
また国家は国家権力や軍事力という強大な力を持つ存在であるから、国家が主体であり、多国籍企業はその国家に従う存在であると考えられている。独占禁止法に基づく大企業に対する規制や所得税の累進課税制度、世界的覇権を握る米国政府によって他国のグローバル企業・金融資本(銀行)に対してしばしば行われる金融制裁、中国政府による中国に進出してくるグローバル企業に対する規制、ロシアのプーチン大統領が資本家を逮捕したことも、その例として挙げられるだろう。
現実主義の論客としては、ハンスモーゲンソー、キッシンジャー、ケネスウォルツ、サミュエルハンティントン、ジョンミアシャイマー、ステーブンウォルト、C・レイン、エマニュエルトッドなどがいるが、日本人では伊藤貫以外の論客は、ほぼ皆無と言ってよい。なお、日本で現実主義の学者として評価されている北岡伸一、高坂正尭、佐藤誠三郎などは、日本の自主防衛(=核武装)を否定する対米従属思想(=米国の核の傘に依存する)であるから、現実主義ではない。このような思想は、「バンドワゴン外交」と呼ばれ、「国を滅亡に導く外交・国防政策である」と、現実主義派の学者から強く批判されている。
次に、ユダヤ陰謀論について、簡単に説明する。
ユダヤ陰謀論者たちは、国家ではなく、国際金融資本(ロックフェラーやロスチャイルド)が国際社会を動かしていると主張している。それらが、国家の枠組みを超えて、各国家をも傘下に置き、支配していると考えている。また、それゆえに、国家と国家との争いは、国家の自発的な動きによるのではなく、国際金融資本に操作されている茶番に過ぎないと考える。例えば、米ソ冷戦は、それら勢力がソ連を作り上げ、米ソ対立を演出したものであり、軍需産業による兵器製造を正当化するための茶番(お芝居)に過ぎないというものだ。その代表的論客として、馬渕睦夫氏や林千勝氏や三橋貴明氏などがいる。
ここで、今まで見てきた両者の特徴からそれぞれが持つ構造を明確にしておこう。
国際政治学(リアリスト学派)が想定する国際社会の構造は、「国家 vs 国家」である。
一方、ユダヤ陰謀論でのそれは「国際金融資本 vs それに支配される者(国家や人々)」である。
したがって、前者では「国家がどのように動くのか」が重要であり、後者では「国際金融資本がどのように動くのか」が重要になってくるし、国家が主体的に動いていること自体を否定する。
研究すべき対象が全く違うし、ユダヤ陰謀論は国際政治学で最も重要な存在である国家について、影響力を持たないものと見なしているから、両者は全く相いれない考え方だと言えるだろう。
馬渕睦夫氏の「ウォール街がすべてを決めているから、国際政治学を学ぶことなどバカらしい」(※チャンネル桜主催の沖縄での講演会での発言)という言葉に、両者の違いがよく現れているだろう。
次に、「なぜ、国際政治学という学問が誕生し、必要とされているのか」という理由を考えてみる(※ここで、ユダヤ陰謀論ではなく、国際政治学を取り上げるのは、前者を研究する学問が存在しないからである)。
以下では、国際政治学とユダヤ陰謀論を比較することによって、ユダヤ陰謀論が持つ矛盾を炙り出していく。
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