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“マルチタレント”を名乗れる資格とは? “マルチな活躍”だけでは足りない理由
2018-03-28
いつの時代も“マルチタレント”と呼ばれるタレントは数多く存在する。例えば、1980年代にはバラエティアイドル、いわゆるバラドルがいたように、“マルチに活躍するタレント”がさまざまな分野で親しまれてきた。巷ではそのようなタレントを気軽に“マルチタレント”と呼んではいるが、全ての分野において超一流の活躍を提示しなければ、本当の意味での “マルチタレント”とは呼べないのではないだろうか。果たして、真の“マルチタレント”が現在の芸能界にどれだけ存在するのだろうか?
どんなジャンルでもその肩書を“背負える”逸材が真の“マルチタレント”に
タレント(=talent)を直訳すると、“才能”や“才能を持つ人”と言う意味で、日本では“芸能界で活躍する人”という意味が一般的に浸透している。それらを踏まえた上で“マルチタレント”とは、多様な才能を生かして多方面で活躍している芸能人と言える。更には、様々な肩書きを名乗れる芸能人、もしくは、本業が何なのか分からないほど、全ての分野で才能を見せつけている芸能人を“マルチタレント”と呼ぶのだろう。
では、現在の芸能界で“マルチ”な活躍をしている芸能人は、“マルチタレント”と呼べるのだろうか。例えば、人気俳優が番組のMCやコメンテーターをしたり、バラエティ番組への出演をしたり、出演作の主題歌を歌う場合は多々ある。また、アニメの声優や洋画の吹き替えを務めることも多い。しかし、それらは俳優活動の一環としてみなされることが多く、俳優が司会者やコメディアン、歌手、声優の肩書きを名乗ることはまずない。あくまで彼らにとっては本業の活動がメインだ。
他にも、ミュージシャンがドラマや映画に出演したり、俳優が自主映画を製作したりしても「あの歌手が出演!」「あの俳優が手掛けた!」と、本業をメインとする言われ方がほとんどだ。それでは真のマルチタレントとは呼ぶことはできず、うがった見方をすればメディアの手によって量産されたマルチタレントと言っても過言ではない。一方で北野武や所ジョージ、大泉洋、又吉直樹、星野源や小島瑠璃子など、映画監督やMC、バラエティ、ミュージシャン、作家、モデルなどの全てにおいて本業と同じだけの実績を残しているタレントは、多くの人が“マルチタレント”として思い浮かべるだろう。
声優・山寺宏一、アニメ・洋画界を席巻 歌唱でもバラエティ進出
その中で、どんな肩書きでも“超一流”を名乗れる真の“マルチタレント”のひとりとして、山寺宏一が挙げられる。本業の声優業で代表的な作品をあげれば、『新世紀エヴァンゲリオン』の加持リョウジや、アニメ『銀魂』での吉田松陽。実写版の映画『銀魂』でも同じ役柄で声を担当している。吹き替えではジム・キャリー、エディ・マーフィー、『フルハウス』のジョーイなどの声優も務めている。ディズニー作品も常連で、ドナルドダックや『アラジン』のジーニーなど出演した作品は数知れない。その役柄の多さは同業の声優陣も認めるほど。
昨年放送された『人気声優200人が本気で選んだ!声優総選挙3時間SP』(テレビ朝日系)でも堂々1位を獲得。“七色の声”とも称される多彩な声を持ち、ひとつの作品で何役も担当することも度々ある。「困ったときは山寺宏一」と、アニメ・洋画界では欠かせない声優だ。声優界だけで見てもマルチな活躍と言えるが、その声優としての力量だけでないのが、山寺が“真のマルチタレント”と呼ぶにふさわしい所以である。
例えば、歌唱力もひとつの才能と言えるだろう。昨年3月に公開された映画『SING/シング』では、山寺宏一の美声が話題となり、“歌える声優”としての需要の高さを改めて証明。また、『攻殻機動隊』シリーズの押井守監督が手掛けたOVA作品『御先祖様万々歳!』(89年)で披露したのが、女優・鷲尾真知子とのデュエット曲「興信所は愛を信じない」。キャラクターとしての歌唱の域を超えた色気と哀愁を漂わせ、実際に作中のジョークとして「山寺~!歌うますぎるよ~!」といった野次が入るほどの仕上がりだった。
またジム・キャリー主演映画『マスク』では、歌は担当していないものの「山寺さんは『マスク』で“歌の部分の吹き替えもやりたい”とおっしゃっていました」(エンタメ誌ライター)と言うように、本人も自信を覗かせている。その歌唱力と多彩な声を生かして、いまやものまね番組の常連にもなっており、『ものまねグランプリ』(日本テレビ系)では、見た目よりも(?)声で勝負。「さかなクン」「鈴木雅之」「桐谷健太」「福山雅治」らを披露して“激似”と話題になった。
何をやらせても“本業”、天賦の才を持つ最強の“マルチタレント”
ほかにも、子ども向け情報バラエティ『おはスタ』(テレビ東京ほか)では朝の顔「やまちゃん」としてMCを1997年から19年間務めた。MCとしての抜群の対応力を持ち合わせ、子どもたちや親からも大きな支持を得た。番組卒業時「やまちゃんは世界一幸せ者です」と語った彼の涙を覚えている人も多いのではないだろうか。
また、俳優としても三谷幸喜作品のドラマ『合い言葉は勇気』(フジテレビ系)や映画『みんなのいえ』『THE 有頂天ホテル』に出演。三谷作品に出る役者に名優が多いことからも、演技力は折り紙付き。また堤幸彦監督作『20世紀少年』シリーズでのコンチ役は原作ファンも太鼓判を押しており、映画やドラマ、舞台への出演で演技派俳優としての一面も垣間見ることができる。その他、“真のマルチタレント”の条件のひとつである認知度も、山寺が自身のTwitterに投稿した「彼氏とデートなう。に使っていいよ」の画像が現在18,5万リツイートと35.7万いいねが付いており、大反響を呼んだことでも証明できる。
そのように多方面で本業と同じように活躍でき、更に全世代からの認知度もある山寺は、“代わりがない稀有な存在”と言えるだろう。それはつまり、いつか引退の時が訪れたとき、声優界のみならず日本のエンタメ業界としても大きな損失となるに違いない。その存在感こそが真の“マルチタレント”であり最強の“マルチタレント”と言えるのではないだろうか。
だが現在は、山寺に続くマルチタレントを生み出す土壌があるとも言える。かつては芸を極めるためにはその道のプロを頼り、技術の習得ができる場所へ出向くほかなかった。だが、例えば音楽制作では、今や自宅のパソコンで情報収集して制作ができる時代。さらにYouTubeやSNSで容易に自己発信をすることもでき、ネット社会の恩恵から選択肢が増えたとも言える。また、メディアの多様化が進む中、マスコミは少しでも話題性のあるタレントを起用しようと常に目を光らせており、本業以外の活動にスポットライトが当たる場合も多い。そのような現状から、今までにいなかった新たなタイプの“マルチタレント”が出現する可能性は大いにあるだろう。
(文・今 泉)
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