東洋経済オンライン デービッドアトキンソンさんより
David Atkinson
小西美術工藝社社長
元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年、イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し、注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。同社での活動中、1999年に裏千家に入門。日本の伝統文化に親しみ、2006年には茶名「宗真」を拝受する。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社に入社、取締役に就任。2010年に代表取締役会長、2011年に同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ、旧習の縮図である伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。
日本政府は日本人労働者をバカにしている
最低賃金と生産性の間には強い相関関係があります。
最低賃金と生産性の相関がここまで強いということは、諸外国は最低賃金を「感覚的に」設定しているわけではなく、何らかの「計算式」が存在していることが推察されます。明示されてはいませんが、この相関からして実質的なコンセンサスのようなものがあることになります。
実際計算してみると、1人あたりGDPが日本に近いドイツやフランス、英国の場合、最低賃金は「1人・労働時間1時間あたりGDP」の約50%に相当します。一方の日本はというと、なんとわずか27.7%という、ありえないくらい低い水準に抑えられているのです。
欧州の50%に比べて、たったの27.7%だからこそ、日本のワーキングプアは欧州に比べて多く、格差が生まれています。最低賃金の引き上げは、格差社会是正の役割も果たします。
今挙げたドイツ、フランス、英国は社会保障制度が充実しているという点で、日本と共通しています。社会保障制度を維持するために最低賃金を高くして、稼ぐ力を高めさせて、税収を維持する仕組みとなっています。
人口が増えない中で社会保障制度を維持するためには、生産性を向上させるしかありません。
日本の労働者の質は欧州の国よりも高く評価されています。にもかかわらず、最低賃金が低く抑えられている理由とはいったい何なのでしょうか。日本の最低賃金を欧州並みに引き上げたとして、何の問題があるのでしょうか。欧州でもできることが、なぜ日本人にはできないのでしょうか。
最低賃金をこのように低く抑えこんでいる日本政府の態度は、まるで「日本人労働者が本当は技術がなく、勤勉でもなく、手先も器用ではない」と言っているのと同じように私には映りますが、そのように解釈していいのでしょうか。違うというなら、完全なる矛盾です。
政府は企業を優遇しすぎて、国民をいじめているのです。バカにしていると言っても過言ではありません。
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