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デービッド・アトキンソン氏 プロフィール
株式会社小西美術工藝社 代表取締役社長。奈良県立大学客員教授。三田証券社外取締役。元ゴールドマン・サックス証券 金融調査室長。
1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学(日本学専攻)卒業後、大手コンサルタント会社や証券会社を経て、1992 年ゴールドマン・サックス証券会社入社。大手銀行の不良債権問題をいち早く指摘し、再編の契機となった。同社取締役を経てパートナー(共同出資者)となるが、2007 年退社。
2009年に創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社入社、取締役に就任。2011年代表取締役会長兼社長、2014年に代表取締役社長に就任し現在に至る。
1999年に裏千家に入門し、2006年に茶名「宗真(そうしん)」を拝受。 2016年 財界「経営者賞」、2017年「日英協会賞」受賞、2018年総務省「平成 29 年度ふるさとづくり大賞個人表彰」、2018年日本ファッション協会「日本文化貢献賞」受賞。
著書は『新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞、東洋経済新報社)、『新・所得倍増論』(東洋経済新報社)、『日本再生は、生産性向上しかない!』(飛鳥新社)、『世界一訪れたい日本のつくりかた』(東洋経済新報社)、『新・生産性立国論』など多数。
政府への提言を続ける一方、各地の観光振興のため奔走し、2015年から日本遺産審査委員、京都国際観光大使、明日の日本を支える観光ビジョン構想会議委員、2016年から東京の観光振興を考える有識者会議 委員、行政改革会議歳出改革ワーキンググループ構成員、迎賓館(迎賓館赤坂離宮・京都迎賓館)アドバイザー、二条城特別顧問、観光戦略実行推進タスクフォース有識者メンバー、国立公園満喫プロジェクト有識者会議検討委員などを務めている。
デービッド・アトキンソン氏「少子高齢化の日本では『移民』より『訪日観光』を促進すべき」…その理由、インバウンドのあるべき姿とは?
著者:訪日ラボ編集部
公開日:2018年07月18日
更新日:2020年05月05日
株式会社小西美術工藝社代表取締役、デービッド・アトキンソン氏は『新・生産性立国論』をはじめ多数の著作を持ち、日本のインバウンド業界への提言を続けています。
2018年7月4日には「ヒト・モノ動きの未来塾」の勉強会に講師として登壇しました。
「ヒト・モノ動きの未来塾」は運輸・観光領域の再定義、基幹産業化するために必要となる取組について、様々な企業⼈・個⼈・官庁関係者が専⾨分野を越え議論を深め交流しようと立ち上げられたものです。
数値やデータの分析など、しっかりとした裏付けから導き出されるアトキンソン氏の提言は具体的でわかりやすく、少子高齢化に向かう日本の未来を生きぬく上でインバウンド産業の持つ可能性を教えてくれます。
目次
少子化日本で「移民」より「訪日観光」を促進すべき理由
少子化対策によるGDP維持も現実的ではない
インバウンド産業は世界で3つ目に大きい輸出産業
「呼ぶだけ、顧客満足度に責任を持たない」観光地は問題
価値に「付加価値」をつけるのが観光産業:二条城がその成功例
無理に周囲と協調せず「まずは1つが突き抜ける」ことが大事
まとめ: インバウンド産業は日本のこれからの経済を担う主要輸出産業へと成長する可能性
少子化日本で「移民」より「訪日観光」を促進すべき理由
著作『新・生産性立国論』でアトキンソン氏は日本の移民政策についても言及しています。今回の講演でもアトキンソン氏は日本がなぜ移民ではなく訪日観光客誘致に注力すべきかを話し始めました。
「日本は世界にも稀にみる急激な人口増を経験し、そして今後は急激な人口減に見舞われる国です。これほどの急激な人口増減を短期間に経験した国はありません。未知の領域に入っていくわけです。」
アトキンソン氏は安易に移民を推進しようという考えには与しないと言います。
日本が移民によってGDPを維持しようとするのであれば、3419万6000人の移民が必要な計算になります。これは日本の人口の40%に相当する移民を受け入れるということです。例えばドイツや英国1国の総労働人口を上回る数字です。
「移民によるGDP維持は現実的ではないのです。」
少子化対策によるGDP維持も現実的ではない
アトキンソン氏は少子化対策でGDP維持するのも現実的ではないと言います。
計算によると、少子化対策が効果を出したとして、現在のGDPを維持するためには女性1人が4.4人の子供を産むことが必要だと言います。
近年の未婚・晩婚化で産まない選択や産む期間が短くなっていることを考慮すれば、産む意思と環境がある女性に8.5人ずつ子供を産んでもらわないとGDPは維持できないそうです。
現代の社会において、8.5人の子育ては女性にとっても、子供を育てる若い夫婦の負担としても、とうてい可能な数字ではありません。
インバウンド産業は世界で3つ目に大きい輸出産業
「移民」「少子化対策」が日本のGDPを維持する特効薬になりえない。しかしアトキンソン氏は日本のインバウンド産業に期待しているといいます。
訪日外国人を日本に受け入れて消費を行ってもらうインバウンド観光は日本国内で輸出をしているのと同じです。
世界的に見ると観光産業はすでに自動車産業を抜き去り、3つ目に大きな輸出産業になっており、これからもまだ伸びるといいます。
「日本は観光の4要素と言われる、1.気候・2.自然・3.文化・4.食事がみな高いポテンシャルを持っています。その証拠に、インバウンドにきちんと取り組み始めた数年前から観光産業は急激な成長を見せています。」
「呼ぶだけ、顧客満足度に責任を持たない」観光地は問題
上手く滑り出したように思われる日本のインバウンド産業ではありますが、アトキンソン氏はせいぜい30分しか滞在できない観光スポットがたくさんある現状は問題だと感じているそうです。
「ヨーロッパからの訪日外国人は何日もの休みを使い、大金をはたき、長いフライトをして日本にやってくる。しかし、写真と広告だけ上手、実際に訪れると満足度が低い観光地が日本にもまだまだあります。
見るものが足りない、休む場所もない、歴史などの説明も足りない。30分も滞在するともういられなくなる。観光スポット1か所に付き滞在時間30分というのは日本の人口が増えていた時代に、新しい客が次から次へと団体で押し寄せていた名残りです。」
耳に痛いコメントですが、長距離を移動してその地に辿り着いた訪日ヨーロッパ人などの気持ちを考えるとその通りかも知れません。
価値に「付加価値」をつけるのが観光産業:二条城がその成功例
少しの工夫で滞在時間は伸ばせる、せめて半日は滞在できるように工夫すべきだとアトキンソン氏は言います。
腰かけるポイントを作る
カフェを併設する
多言語対応した地理・歴史などの説明を設ける
ごく身近で低予算に出来るこういった施策がまだまだ足りていないのは問題ですが、気づけばすぐに対応できることばかりです。
「価値」ある観光スポットに「付加価値」をつけることを心掛ければ、同じ観光資源からさらなる収益化も可能になるといいます。
アトキンソン氏が携わっている京都の二条城観光改革プロジェクトでは、夏季限定で早朝に朝食を食べられるサービスを始めました。
城内の香雲亭で1日40食限定で提供され、料金は3000円です。
通常の入場料は600円(来年から1000円)ですから、朝食3000円は普通に考えれば高いように思われますが、二条城で「京のゆば粥御膳」というプレミアム朝食を体験できるとあって大人気、予約が困難だといいます。
特別な施設を作ることもなくアクティビティ化により、アイディアひとつで収益が上がる一例です。
無理に周囲と協調せず「まずは1つが突き抜ける」ことが大事
セミナー終了間際、質疑応答の時間には地方創生に携わる若い参加者から質問がありました。
質問者
「地域創生の旗を振るべきリーダーやDMO(District Management Organization)がない場合、地域として誰を中心にやったら、どうしたらいいのでしょうか?」
「大企業だから、有力だからといって地域全体のことまで考えているとは限りません。足並みをそろえたいという日本の文化はわかりますが、それにこだわることによって才能ややる気が潰されてしまう。
まずは周りを気にせずに自分が突き抜けて良いサービスを提供するのが大事です。」
突き抜けて良いサービス、といえば、アトキンソン氏は講演の最後にようやく日本に1泊300万円の宿泊施設が登場したことにも触れました。
日本は超富裕層向けのインバウンド誘致に弱いと言われ、その原因の1つが富裕層向けの五ッ星ホテルが足りないことだとアトキンソン氏は指摘します。
「ピラミッドの頂点にあたる最高ランクの五ッ星ホテルが足りないということは、もちろんその下の四ッ星も、その下の三ッ星のホテルも足りないということです。」
遠慮なく突き抜けた最高のサービスが現れると、それに続くものがどんどん現れて周囲のレベルも上がっていくのです。
まとめ: インバウンド産業は日本のこれからの経済を担う主要輸出産業へと成長する可能性
「日本は急激な人口増に対応して急激に整備したインフラが国中にあります。
これがまた急激な人口減で急激に老朽化していきます。
このインフラを朽ち果てさせてしまうのか、それともインバウンドという新たな経済活動に使ってもらい、維持していくのか。」
アトキンソン氏は最後にこう問いかけて講演を終えました。
アトキンソン氏はインバウンド産業を日本がこれから立ち向かわなくてはならない少子高齢化やインフラ老朽化問題への一つの解決策として捉え、その可能性や問題点を日本人の気づかない視点から率直に伝えています。
「日本人は取り掛かるまで時間がかかるが、取り掛かると速い。そこは好きなところです。」
日本人誰もが「国際観光立国なんて本当に出来るのだろうか」と思っていた時期が長らくあったのは事実で、アトキンソン氏はその中で矢面に立ち先頭に立って耳に痛い提言をしてきました。
日本の国宝を修復する小西美術工藝社の社長であり、日本に20年以上定住するという選択をしたアトキンソン氏は、日本人以上に日本への想いが強いのかもしれません。
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