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はじめに:『仮想通貨とWeb3.0革命』
2022.6.16
千野 剛司 プロフィール
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千野 剛司 / Takeshi Chino
Payward Asia株式会社 代表取締役社長 / Kraken Japan 代表
慶應義塾大学卒業後、2006年に東京証券取引所(東証)に入社。2008年の金融危機以降、東証傘下の清算機関である日本証券クリアリング機構(JSCC)において金融機関破綻時の管理プロセスの改良プロジェクトに従事。2009年以降、OTCデリバティブ取引の清算集中プロジェクトを主導。その後、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの 戦略的な議論をサポート。2018年に仮想通貨取引所「Kraken」を世界的に運営する米国のPayward, Inc.に入社。 2020年3月より現職。
一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会 理事(2021年6月から現在)。
一般社団法人日本暗号資産取引業協会 副会長(2021年6月から2022年6月まで)。
オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。
メディア掲載等
著者ページ
日本経済新聞
CoinDesk Japan
東洋経済
講談社 マネー現代
ダイヤモンド・オンライン
NewsPicks
2022年
NIKKEI Financial 日本は「鎖国」脱却を 仮想通貨、世界で経済圏
2021年
4/27 Newsweek ビットコイン相場を揺るがす米ETFの行方〜
5/20 テレ東BIZ誕生祭! 貨幣の歴史から見たビットコインの特性とは!?どうなる未来の暗号資産!
5/26 Newsweek デジタル人民元が「ビットコインを潰す」はむしろ誤解〜
6/8 Bloomberg One Crypto Exchange Is Going to Extreme Lengths on Cybersecurity
6/8 Bloomberg サイバー攻撃、つけ入る隙は社員の言動にあり〜
6/21 BUSINESS INSIDER 「エルサルバドルのビットコイン法定通貨化」とは何なのか?〜
7/13 あたらしい経済(#CONNECTV) 暗号資産で世界に抜かれた日本、なぜ?
7/14 あたらしい経済(#CONNECTV) 日本で暗号資産の上場は早まるのか
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その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は千野剛司さんの『 仮想通貨とWeb3.0革命 』です。
【プロローグ】
革命のスタートはウォール街から
Web3.0(以下、Web3)という概念は、インターネットの歴史の中で語られることが一般的です。ウェブサイトや電子メールが登場したWeb1、スマートフォンやSNSが席巻したWeb2、そして最近流行りのNFT(ノン・ファンジブル・トークン)などに代表されるWeb3という流れの中でWeb3を捉えている方は少なくないでしょう。しかし、Web3革命の本質を捉える上でもう一つ重要な要素があります。意外に思われるかもしれませんが、それは「金融」です。
一体なぜでしょうか? 簡単にいうと、Web3で最初の成功例が「インターネット×金融」の領域で生まれたからです。それは「インターネットのマネー」と呼ばれるビットコインです。「金融に革命をもたらしたビットコインとは何なのか?」ということについて深く知ることがWeb3の本質をつかむ上で重要であり、近道なのです。
そもそもWeb3とは何でしょうか? 詳しくは本書で解説しますが、基本的には、国や企業など巨大な既得権益層から個人が権利を取り戻す動きなのです。この概念が最初に刺さった業界はシリコンバレーではなくウォール街だったということです。金融業界という旧態依然とした業界が、既にWeb3が手を差し伸べてくれないと立ち行かなくなるというギリギリの状態だったのでしょう。
一方、シリコンバレーの方を見てみましょう。Web3は、理論上、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック〈メタに社名変更〉、アマゾン)を中心としたデジタル経済の構造を根底から覆す可能性を秘めています。ただ、まだ実現から程遠いのが現状です。あなたやあなたの友人、家族は、インスタグラムやフェイスブックを使うのと同じ感覚で、Web3版のソーシャルメディアとして期待されているサブソーシャルやアントレを使っていますか? おそらく名前を聞いたことすらないと思います。
リーマン・ショックが起きた翌年の2009年、ビットコインは誕生しました。それは、「大きな政府」の失敗による金融危機に対する反感であり、民主主義的なプロセスを経て選ばれたわけではない中央銀行のエリートが作る金融政策によってお金の価値が左右されることに対する抗議であり、既存の非効率で不透明な金融システムに対する疑問が形になったものでした。
こうした金融業界における文脈で多くの人々の心に響いたのが、中央組織の恣意的な決定に左右されずに自立した個人がお互い協力し合って管理するビットコインという新たなお金です。個人がお金にまつわる所有権(発行権)を政府・中央銀行が独占した状態から取り戻すことに成功した点でビットコインはWeb3の先駆けなのです。
2020年、ポール・チューダー・ジョーンズというウォール街の伝説的なトレーダーがビットコインに目をつけ始めました。2021年、テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、テスラによるビットコイン保有を発表しました。
同年、エルサルバドルという中米の国がビットコインを法定通貨に採用しました。ビットコインのポテンシャルはまだこんなものではないかもしれませんが、ビットコインが成功しているのかについて疑問の将来、大学の授業で、「Web3基礎編」というものがあるとすれば、ビットコインと仮想通貨の歴史が教えられることになるでしょう。
しかし、基礎編をすっとばして応用編をいきなりやろうとしている国があります。残念ながら、それは日本です。金融業界で実際に起きている革命であるビットコインや仮想通貨といった話をなかったことにして、Web3をやっている気になってしまっていると言っても過言ではありません。余地はないでしょう。ちなみに、米国の仮想通貨関連企業の時価総額は、日本のメガバンクに匹敵するほどの額にまで成長しています。
将来、大学の授業で、「Web3基礎編」というものがあるとすれば、ビットコインと仮想通貨の歴史が教えられることになるでしょう。
しかし、基礎編をすっとばして応用編をいきなりやろうとしている国があります。残念ながら、それは日本です。金融業界で実際に起きている革命であるビットコインや仮想通貨といった話をなかったことにして、Web3をやっている気になってしまっていると言っても過言ではありません。
日本はWeb3基礎編の教科書を無視するどころか、足で踏みつけてしまっています。NFT事業の開始を検討する日本を代表する企業の担当者が口を揃えて言うのは、「仮想通貨の色を消したい」という話だと私の知り合いの記者から聞いたことがあります。
また、知り合いのテレビプロデューサーはNFTについて特集するテレビ番組で仮想通貨がNGワードとして取り扱われていると教えてくれました。Web3とその代表格であるNFTを学ぶ上で、ビットコインをはじめとする仮想通貨こそが生きる教科書であるはずなのに、日本はあえてそこから目をそむけています。
仮想通貨の先進国から後進国に
一体、なぜこんなことになっているのでしょうか? そこには、金融や投資の話が苦手という日本人の特性があるかもしれませんが、一番大きい理由は日本の仮想通貨をめぐる「不幸な歴史」であると考えています。皆さんも、ビットコインについて悪いイメージを持っている方が多いのではないかと思いますが、それには、なぜか日本には仮想通貨取引所への巨額ハッキング事件が相次いだという歴史が関係しているのです。
実はかつて日本は仮想通貨の先進国でした。「ビットコインの伝道師」と呼ばれたロジャー・バー氏をはじめ世界の仮想通貨の熱狂的な支持者が東京に集結していました。2014年にハッキングを受けたことで有名になったマウントゴックスは、当時、ビットコインの取引量で世界1位でした。
ハッキング後、世界的な仮想通貨への熱狂は一時的に下火になりますが、2017年末の強気相場を牽引したのは日本の投資家たちでした。「億り人」と呼ばれる人々がたびたびテレビに出演していたことを記憶されている読者の方もいるかもしれません。
しかし、2018年1月、日本の仮想通貨取引所であるコインチェックがハッキングされます。時を同じくして、世界的に仮想通貨への関心が低下するいわゆる「冬の時代」が始まりますが、コインチェック事件は日本に大きな傷痕を残しました。仮想通貨に対する世間の信頼が、かつてないほど下がってしまったのです。その後、2018年のザイフ、2019年のビットポイントジャパンと日本の取引所ではハッキング事件が相次ぎました。
日本には、仮想通貨を受け入れる素地がもともとあり、世界中から優秀な人々を惹きつけていた時代があったのです。日本が世界に先駆けて仮想通貨を定義する法律を作ったのも、仮想通貨に対する楽観的なムードがあったからでしょう。この流れに水をさしてしまったのが、相次ぐハッキング事件とそれを受けた規制の強化なのです。
米エリート学生が仮想通貨を選ぶ意味
さて、Web3基礎編でビットコインなど仮想通貨をしっかりと学んだ優等生もいます。お察しの通り、それは米国です。そして米国は、いち早く「冬の時代」から目覚めて、2020年後半から2021年を通して比較的短期間でWeb3の基礎編を一気に学びました。その期間、米国ではビットコインをはじめとする仮想通貨の社会的な地位が一気に向上したのです。米国は、Web3という基礎編をしっかり学んだ後、満を持してWeb3応用編であるNFTという分野に挑戦しているのです。
「米国アイビーリーグのエリート学生がインターン先に選ぶのは、GAFAではなくて仮想通貨取引所という時代になった」
私は、米国を拠点にする仮想通貨取引所クラーケンの日本法人の代表を務めていますが、右記は私の同僚から聞いた言葉です。日本の読者の皆さま、この言葉を信じられますか? 東大生や京大生がGAFAを蹴って仮想通貨関連の企業に行くなんて言い出したら、周りから「大丈夫か?」と心配されてしまいますよね。
米国のエリート学生は、必ずしも仮想通貨で一攫千金を夢見ているわけではありません。Web3時代における仮想通貨の本質的な役割に気づいているのです。仮想通貨を「投機目的」や「怪しい」という理由で片付けるのか、「真剣に取り組むか」の差は大きいと思います。そして、その差を埋めない限り、日本がWeb2の大敗をWeb3で取り戻すことはないと考えています。日本の基礎を疎かにしたにわか仕込みのNFTが、世界で勝てる確率は極めて低いでしょう。
世界最大のNFTマーケットプレイスであるOpenSea(オープンシー)では、明らかに日本の文化に影響を受けたであろう多くの作品が評価されています。例えば、あずき(Azuki)という、日本のポップカルチャーから影響を受けたNFTコレクションはその代表格です。
しかし、Azukiの拠点があるのは東京ではなくロサンゼルスです。日本が世界的に有名なアニメやゲームに代表されるIP(知的財産)をいくら持っていても、NFTでの勝ち筋を学ばない限り、日本を拠点にしたプロジェクトが日の目を見ることはないかもしれません。
仮想通貨が生み出した新しい組織のあり方
さらに一歩、話を進めさせてください。ビットコインなど仮想通貨の意義は、個人を主体とした新しい組織のあり方を生み出したことだと考えています。そのような組織を業界用語でDAO(ダオ)(自律分散型組織)と呼びます。後ほど詳しく解説しますが、「上司なし」「給料は仮想通貨払い」「参加者による投票で事業計画決定」という3つの要素から構成される組織だと理解してください。
先ほど、Web3における最初の成功例がビットコインと申し上げましたが、それはビットコインがDAOとして成立したからと言い換えても差し支えありません。そして、他のさまざまな分野でDAOの精神を実践しようという流れがWeb3革命の本質なのです。
繰り返しになりますが、日本はIP大国です。また、SF小説などで近未来が描かれるとき、渋谷など東京をモチーフにしたような都市の描写をよく見かけます。東京=近未来都市という憧れにも似た感覚が世界の人々の心の中にはあるのかもしれません。
しかし、このままでは宝の持ち腐れになってしまいます。外国人の方がWeb3の勘所をしっかり押さえて日本の文化をうまく発信しているというのは少し寂しい現状です。私が打開策として提案したいのが、金儲けではない部分の仮想通貨の本質=DAOについて真正面から学んで受け入れることです。
金融業界とインターネット業界の関わり
今、日本では、インターネット業界に携わる多くの人々が、「Web3」や「NFT」について語っています。中には、金融の分野は少し馴染みがないという方々も多いかもしれません。しかし、現状でWeb3を最も体感できる場所は金融業界です。本書がWeb3の本質について考える機会になれば幸いです。
また、既存の金融業界の方々には、本書を通じて金融業界こそWeb3革命の最初の震源地であるということをお伝えできたらと思います。私もかつて伝統的な金融の世界にいましたが、今は仮想通貨の世界にどっぷりつかっています。仮想通貨業界に来る前の私が何を考えていたのか、なぜ仮想通貨業界に来ようと思ったのか、個人的なエピソードもお話しします。
第一章では、Web3、NFT、DAOという新しい概念について解説します。Web3は個人がインターネット上の権利を取り戻すための動きであり、これによりデジタルデータを「保有」することの意味が変わってきている点をゲーム業界を例に説明します。また、Web3の先駆けとしてのビットコイン、それに続くイーサリアムの位置付けを説明した後、NFTの仕組みについて解説します。その後、私が仮想通貨の本質と考えるDAOという概念を紹介します。
第二章では、なぜ金融業界がWeb3の震源地と考えられるのか、ビットコインをはじめとする仮想通貨の意義に加え、2021年に起きた「ゲームストップ騒動」や私の個人的なエピソードを交えて解説します。その上で、日本が米国をはじめとした世界から取り残されている理由について、日本には仮想通貨を真剣に捉えられなかった「不幸な歴史」があったことを解説します。その上で、仮想通貨の本質に触れないままNFTなどの流行り物に飛びつく日本は、世界の潮流から外れガラパゴス化するのではないかと警鐘を鳴らします。
第三章では、Web3先進国である米国の最新事情と規制面での課題を解説します。高まるインフレ懸念の中で米国では「インフレヘッジ」としてビットコイン等の仮想通貨が多くの人々に受け入れられ始めています。その背景にある、仮想通貨が理論と実践の両面で普及し始めている点や仮想通貨が米中覇権争いの舞台として捉えられている点などの論点を紹介します。
また、NFTやDeFi(ディファイ)(分散型金融)といったブロックチェーンのイノベーションを支えるステーブルコインという重要な機能に関して、その規制の動向についてもお話しします。
第四章では、今後注目すべき点の一つとして、NFTの受け皿であるブロックチェーン同士の競争について解説します。アプリの受け皿として一番人気のブロックチェーンはイーサリアムですが、人気が高まりすぎたことからガス代と呼ばれる手数料が高騰し、代替となるブロックチェーンが台頭しています。また、イーサリアムが大型アップグレードで手数料問題にどのように対応していくのか、イーサリアムを支える勢力も台頭している点とともに紹介します。
終章では、Web3の領域で世界に負けないために日本は何をするべきかを提案します。DAOという仮想通貨の本質を摑むことでWeb3を実践するために必要な土台作りをした後、日本には世界の競合にはない固有の強みがあることをお伝えします。
本書ではコラムを通じて、基本的な用語解説や知識の整理を行います。また、世界最大級の仮想通貨メディアのコインデスク・ジャパン編集長である佐藤茂氏とWeb3の領域で世界で成功を収めているアスター・ネットワークを開発するステイクテクノロジーズのCEOである渡辺創太氏と、それぞれ対談を行いました。Web3とは一体何なのか、Web3によって世の中がどう変わるのか、そしてWeb3によって形作られる新しい資本主義とは何か、お伝えできれば幸いです。
注: 仮想通貨の和文とティッカーの表記(例:ビットコイン⇔BTC)に関して、プロジェクトやトークンなど異なる対象を指す際に使い分ける場合がありますが、本書では便宜上、全ての場面で和文表記(ビットコイン)で統一させていただきます。
また、ビットコインなどを総称する言葉として、一般に認知されている「仮想通貨」を主に用いますが、法令上の用語など「暗号資産」と表記することが適切な箇所では適宜「暗号資産」を用います。
続いて「YOUTUBE」です
インターネット版「自由民主」特別対談河野太郎×渡辺創太
Web3.0を語る 「新しい資本主義はWeb3.0だ!」
自民党
チャンネル登録者数 13.8万人
24,498 回視聴 2022/04/18
GAFA“支配”から脱却? Web3.0が変える世界【日経プラス9】(2022年8月16日)
テレ東BIZ
チャンネル登録者数 173万人
【ひろゆき】Web3.0って何だ?ひろゆきがわかりやすく解説!【ひろゆき Web Web3.0 GAFA AI 仮想通貨 ビットコイン ウェブ3 Web3.0 ブロックチェーン イーサリアム 平将明】
ひろゆきの大学 ひろゆき切り抜き
チャンネル登録者数 935人
29,084 回視聴 2022/01/22
【Web3.0規制緩和】日本でWeb3.0富豪が誕生するのか調査したら凄すぎた!
らすりぞちゃんねる
チャンネル登録者数 1.09万人
7486 回視聴 10 か月前 #仮想通貨 #バブル #Web3
Z世代起業家が語る、web3における日本の課題とポテンシャル【渡辺創太×成毛眞】
NewsPicks /ニューズピックス
チャンネル登録者数 74.6万人
46,506 回視聴 2022/09/24 #成毛眞 #Z世代 #web3
はじめに:『仮想通貨とWeb3.0革命』
千野 剛司 / Takeshi Chino
Payward Asia株式会社 代表取締役社長 / Kraken Japan 代表
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