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米大統領も開発促すツイート: 高まる6Gへの関心、テラヘルツ波利用も視野
高まる6Gへの関心
ドナルド・トランプ米大統領は2019年2月21日(米国時間)、「米国企業は6G(第6世代移動通信)実現に向けた取り組みを強化しなければならない」とツイートした。それからの数週間、6Gへの関心はさらに勢いを増している。米国連邦通信委員会(FCC)は、95GHzと3THzの周波数の利用に向けて、新しいカテゴリーとなる実験用ライセンスを作成した。さらに、6Gの標準規格の草案の作成に向けて、産業界と学術界が2019年3月24~26日にフィンランドで開催された「6G Wireless Summit」に集結した。
FCCは、新しい通信技術の開発と95GHz以上の周波数帯での新サービスの展開を熱心に推進し、「特にデータ集約型の高帯域アプリケーションやイメージングおよびセンシング分野に、同帯域の技術革新の機会がある」と述べている。
同周波数帯の利用を可能にするために、FCCのSpectrum Horizons First Report and Orderは、新しいカテゴリーの実験用ライセンスを作成した。同ライセンスは、イノベーターが柔軟に実験を実施し、試行期間中の機器の市場投入を行いやすくするために、最長10年間付与されるという。
また、FCCは、免許不要のデバイスに使用できる合計21.2GHzの周波数帯を設けるという。宇宙研究や大気探査といった、95GHz以上の帯域で行われてきた政府や科学的な運用への干渉を抑えながら、免許不要な数多くのデバイスに使用できるような伝搬特性を持つ帯域を選択したという。
FCCはこの決定以前は、アマチュア無線や期間、範囲の限定された実験以外に95GHz以上の通信を許可する規則を設けていなかった。同帯域は利用可能な最端の帯域と考えられてきたが、無線技術の急速な進歩によって、95GHzと3THzの帯域を新規開発のために開放できるようになった。
フィンランドのUniversity of Ouluの6Gフラグシッププログラムのバイスディレクターで、2018年9月にフィンランドの6G研究について講演したAri Pouttu教授は、「研究開始から市場投入までは通常10年かかる。6Gに関しても同様だ」と述べている。Pouttu氏は先週、EE Timesに対して、「業界は5Gの展開を開始したばかりだ。6Gの標準化は2030年ごろになると予想される。そのころには5Gがピークを迎える見通しだ。4Gのピークは2025年ごろになるだろう」と語った。
6G関連ホワイトペーパーの作成も
Pouttu氏は6G Wireless Summitの開催前に、「サミットの成果は、6Gに関する初のホワイトペーパーとしてまとめる予定だ。世界中から関係者が集結して、6Gの仕様について検討する。ホワイトペーパーでは、6Gの草案やロードマップ、ユースケース、要件、周波数帯の割り当てなどを定義する予定だ」と語っていた。同サミットには、HuaweiやChina Mobile、China Telecom、Ericsson、Qualcomm、Samsung Electronics、ETRI、NTTドコモなど、各地から主要企業が参加した。
「6G Wireless Summitは、6Gに貢献する意欲のある全ての企業や研究者を招いた世界的なイベントだ。6GフラグシッププログラムはUniversity of Ouluに設置されたグループで、自由に意見を交わすことが認められている。同プログラムは、世界中のグローバル企業や研究グループの意見を仰ぐ中で、6Gがどのようなものであるかについて、ある種のコンセンサスを獲得しつつある」(Pouttu氏)
同イベントの最終日には、6Gのビジョンと潜在的な技術が具体的に説明された。Nokiaのベル研究所のPeter Vetter氏、HuaweiのWen Tong氏、EricssonのMagnus Frodigh氏、SamsungのJuho Lee氏、NTTドコモの中村武宏氏、China TelecomのQi Bi氏、ChinaMobileのGuiyi Liu氏、ETRIのKwon Dong-Seung氏、 欧州委員会(EC)のBernard Barani氏の他、世界中から集まった研究者が登壇した。
講演者の1人で、ドイツのUniversity of Wuppertalで高周波通信技術の教授を務めるUllrich R. Pfeiffer氏は、テラヘルツアプリケーション向けIC設計や100Gビット/秒(bps)を上回る無線フロントエンドについて発表した。
同氏は、「テラヘルツの周波数の活用が進み、トランジスタの遮断(カットオフ)周波数を上回る半導体技術が試験運用されている状況で生み出される新たなアプリケーションや回路について、課題と機会の両方を十分に検討していく」と語った。BiCMOSプロセス技術は最近、最高周波数(fmax)が0.7THzに達し、十分なRF回路性能を備えながら最大約300GHzで動作できるようになったという。
既に始まっている6Gのプロジェクト
6Gの仕様や要件などを検討しているプログラムは、既に始まっている。フィンランドは、5Gの商業化と6Gに必要となる要素技術の開発をサポートすべく、8年間で2億5100万ユーロを割り当てるプログラムをスタートしている。
中国は2018年に、6Gの研究を既に開始している。ITU(国際電気通信連合)には、次世代ネットワークのためのバックボーン技術を検討するワーキンググループもある。SRC(Semiconductor Research Corporation)は、テラヘルツ通信とセンシング技術を開発するための中央研究所を持っていて、1G~100Gbpsの下り通信と、別個に変調した100~1000のビームを目指している。
University of OuluのPouttu教授は、「6Gの標準化は、素材と通信の面で新たな課題を抱えるだろう」と述べる。さらに、スマートフォンだけでなく、例えばデスクや、家の壁、建物の窓ガラスなどがディスプレイとなり、Webサイトを表示するといったような、新しいアプリケーションも出てくるだろうと語った。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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