「フリー座 By 山田高明 Takaaki Yamada」様よりシェア、掲載
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共産中国はあと数年の寿命 2018/8/17
私は最近まで、21世紀に入ってから濫造されるようになった「中国崩壊論」を歯牙にもかけなかった。中国はますます発展していって、やがて日本のGDPを追い越し、世界第2位の経済大国になると、早くから確信していたからである。
その考えを変えたのが2017年だった。
大きな理由の一つはトランプ政権の誕生である。
米中は三つの火種を抱えた
第一に通貨・貿易問題、第二に従来の「一つの中国」を無視する米の姿勢、第三に南シナ海問題や安全保障の分野である。この三つのうち最低でも後者の二つは、白と黒があって灰色がない、妥協を許さぬ米中の闘争になるはずである。
『というわけで、この2017年で、中国はいっそう追い込まれると思われる。そして同国の「これから」だが、おそらく自壊していくと私は半ば確信している。
さて、影の政府的には、「中ロをまとめて片付ける」から「中ロを分断し、先に中国を片付ける」という方針へと転換したのではないか、という予測を先に述べたが、これが正しいとしたら、中国はかつての旧ソ連と似た運命を辿るはずだし、実際、キッシンジャーの狙いもそこにあると私は確信している。』
つまり、昨年から旧ソ連のように体制崩壊する道を歩み始めたということ。
「あと数年の命脈」
『トランプ政権の対中「再封じ込め政策」(re-Containment policy)によって、中華人民共和国の命運は定まった。あと数年の命脈だと確信する。』
これが2017年3月のことである。
このように、私はもともと中国発展論者だったが、昨年から崩壊論者に転じた。そして、はっきりと「あと数年の命脈」と予測し断言している。
興味深いことに、世の中には私とまったく正反対の動きをする人もいる。
それが日本有数の中国ウォッチャーである富坂聰(さとし)氏である。彼は北京大学中文系で学び、中国語を駆使できる人物だ。もともと中国崩壊論者だったが、昨年の5月に『中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由』を上梓し、反対の立場に転じた。
繰り返すが、富坂氏は日本有数の中国専門家である。片や私はただの素人だ。どちらの予測が正しいか? 数年後には答えが出ているだろう。
ついに磐石の共産党独裁体制に亀裂が入った
ところで、最近、私が注目した事件があった。
それが、習近平のポスターに中国人女性がインクをかけた事件である。彼女は「習近平の独裁に反対!」と叫び、その様子を「微博(ウェイボ)」に生配信した。すると当局に連行された。精神病院に強制入院させられたそうだ。
ちなみに、著名な日本の左派の多くがこの事件を黙殺したのが笑える。彼らも何十回と「安倍独裁に反対!」と叫び、安倍氏のポスターなどにイタズラをしてきた。しかし、誰も逮捕されたことはない。つまり、安倍氏は独裁者でも何でもない。対して、彼らが偉大な政治家と崇める習近平が本物の独裁者だった、というオチだ。その真実をこれほど分かりやすく物語る事件はない。だから都合が悪いため、スルーしているのである。
この女性が連行された後、中国各地で同様の行為が相次いでいる。共産党は公共の場にある習近平のポスターや彫像などを慌てて撤去し始めた。しかも、習近平政権に対して人民側と体制側(党の幹部や長老、知識人)の両方から批判が噴出し始めた。
これは「ダムに入った小さな亀裂」というのが私の見解である。今後、益々大きくなって、いずれ人民の意志や感情を堰き止めているダムそのものを崩壊させるだろう。
この動きを後押ししているのがトランプ政権の対中強硬姿勢である。
私は恐怖と威圧で党内や人々を支配している最高指導者が、南シナ海の“自国の領海”で好き勝手に振舞う米軍に対して何もできない状態が続くなら、共産党の「威信」が揺らぎ、いずれ帝国を束ねる「タガ」が外れると予見した。
「共産中国の運命は決した――開戦滅亡か、内乱分裂か、二つに一つだ!」
(前略)
中国外務省は「主権を損なっている」と激烈に非難している。だとするなら、習近平主席様は、外国から主権を損なわれても、手も足も出せない弱虫・ヘタレということになる。
“愛国心”に燃えた人民が怒って共産党を突き上げるだろう。習近平は部下と人民の前で大恥をかく――面子を失う――ことになる。すると、中国人はどんな反応を示すだろうか。軽蔑交じりに「あいつ怖くないよ」ということになれば、たちまち支配者側の言うことをきかなくなる。日本語のニュアンスで言えば「ナメる」に近い。つまり、被統治側の人民が共産党政権を完全に「ナメて」かかるようになるのだ。これは共産中国という帝国を束ねていた「タガ」が外れることを意味する。
「ヤクザはナメられたらおしまい」というが、同じことは中国共産党にも当てはまる。
これから中国では、「インクかけ事件」と同様の事件が頻発し、人民がどんどん街頭デモに繰り出すようになり、公然と「民主化せよ」と訴え始めるだろう。
終わるのは共産党独裁の帝国である
同じ昨年の話だが、中国の人権活動家の劉暁波(りゅうぎょうは)氏が亡くなった。彼は「89年天安門事件」における民主運動家の生き残りである。
彼が独裁体制廃止などの政治改革を主張したことにより、2009年に「国家政権転覆扇動罪で懲役11年」の判決を受けたことは、中国の政治に関して許しがたいことの一つだ。彼は刑務所に入れられている間にノーベル平和賞を受賞した。当時、中国政府は猛反発した。そして、彼は解放されることなく、まだ61歳の若さで獄死した。
はっきり言って、私はノーベル平和賞の権威を疑っているし、また劉氏も共産党に反対するあまり針が反対方向に触れすぎてしまった感があると思う。彼のアメリカ賛美は盲目的な印象さえ受け、私は賛成できない。しかし、それと中国民主化運動自体は切り離して考えなくてはならない。対祖国においては、彼は正しく、何の間違いもない。
私的に、中国の一番許せない点が、このような言論・思想・宗教の自由の抑圧である。これこそ国家権力による基本的人権の侵害なのである。
こんな体制がこの先も長く続くと信じるのは、ヒトラー政権が永遠に続くと信じるようなものだ。そういう意味で「戦前の過ち」を犯しているのは、習近平を偉大な政治家として褒め称えている一部(?)の左派・リベラル派である。「安倍独裁政権ガー! チンドン、チンドン!」とやっている連中は、その辺が分かっているのだろうか?
ただし、歪んだ中国観の持ち主が多いという点では自称保守派も同じ。彼らは中国人を侮るあまり、中国人の本音や底力というものを全然理解していない。中国人は決して儒教的政治体制に飼い慣らされた盲目的な大衆などではない。普通の中国人は過去30年くらいの間に大きく成熟した。もはや誰かに領導してもらう必要はない。
だから、ソフトランディングか、ハードランディングかは分からないが、近いうちに中国人自らが民主化を成し遂げるだろう。逆にいえば共産党独裁の終わりである。
大きな視点でいえば、共産党の歴史的役割は終わった、ということ。
である以上、支配者自らが体制自殺しないなら、外部によって打倒されるだけである。不況などの経済雇用問題がそのキッカケになるかもしれない。
だから、「中国崩壊論」といっても、別に中国が無くなるわけではない。
中国そのものと、現在の共産中国とは区別しなければならない。
歴史的に見て、中国は王朝が交代すればかなり国の形が変わるのも事実だ。チベットとウイグルの分離独立は十分ありえる。
中国四千年の歴史において、共産党の歴史など、たかだか70年に過ぎない。
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